債務整理で持ち家はどうなる?自宅を守る方法と各手続きのリアルな影響

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債務整理で持ち家はどうなる?自宅を守る方法と各手続きのリアルな影響

借金相談法律事務所

この記事を読むことで分かるメリットと結論

結論から言うと、「どの手続きを選ぶか」で持ち家の扱いは大きく変わります。任意整理なら基本的に抵当権(住宅ローン)そのものは残るので自宅を失うリスクは比較的低いですが、ローン滞納が続くと競売に発展します。個人再生(民事再生)は住宅ローン特則を使えば自宅を維持できる可能性が高く、自己破産では原則として債権者が抵当権付き不動産を処分するため自宅を手放す可能性が出てきます。本記事では、それぞれの手続きの現実性、必要な条件、手続きの流れ、費用感、競売回避の具体策、そして相談時に持参すべき書類まで、実務的にわかりやすく整理します。読み終えれば「自宅を守るために次に何をすべきか」が明確になります。



1. 債務整理と自宅の基本ルール — まず押さえるべきポイント

債務整理と言っても「任意整理」「個人再生(民事再生)」「自己破産」は性質が全く異なります。ここでは、自宅(持ち家)に対する影響を中心に、各手続きのポイントを整理します。具体的な事例や実務上よくある判断材料も交えて説明します。

1-1 任意整理で自宅を維持する条件と現実性

任意整理は、弁護士や司法書士が債権者と直接交渉して利息カット・返済期間延長などの和解を目指す手続きです。ポイントは以下。

- 任意整理は基本的に「無担保債権(カードローン、消費者金融、リボなど)」を対象とすることが多く、住宅ローンのような「抵当権付きの債権」は対象外にするケースが一般的です。したがって、住宅ローン自体はそのまま残ります。
- 自宅を守るためには住宅ローンを遅滞なく支払い続けることが最大の条件。任意整理で他の債務の負担を軽くして住宅ローン支払いに専念できるようにするのが現実的戦略です。
- 任意整理の交渉では、債権者によっては分割払いを受け入れる一方で、抵当権付債権(住宅ローン)については「期限の利益喪失(期限一括請求)」のリスクがあり、滞納が続けば競売手続きが進みます。
- 任意整理の交渉期間はおおよそ数週間~数か月。交渉中は債権者からの督促が一時停止することが多く精神的負担は軽くなります。
- 実務的な判断:ローン残高と今後の収入予測を出して、任意整理で毎月の返済負担がどれだけ下がるかをシミュレーションすることが重要です(後段でシミュレーション方法を詳述)。

私見(筆者経験):個人で相談を受けたケースでは、任意整理でカード債務を整理して月々の余裕を作り、結果的に住宅ローンの支払いが安定し自宅を維持できた例が多いです。ただし、収入が大幅に下がっている場合は任意整理だけでは不十分で、個人再生への切替えを検討することになります。

1-2 小規模個人再生(民事再生)で自宅を維持するポイント

個人再生は裁判所を通じて債務の一部を減額してもらい、原則3~5年で分割返済する制度です。住宅ローンが残る自宅を維持できる特則がある点が特徴です。

- 「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を使えば、抵当権の付いた住宅でも原則として自宅を維持可能。条件は、再生計画が裁判所の認可を受け、住宅ローン部分は従来どおり債権者に直接支払うこと(再生債務の対象外として扱う)ことが要件となることが多いです。
- 小規模個人再生は「継続的な収入があること」が前提で、住宅ローンの支払い見込みがある程度確保できることが必要です。
- 手続きの流れ:申立て→再生計画案作成(債権者説明)→裁判所の認可→履行(分割返済)。期間は準備含めて6か月~1年程度かかることが多いです。
- メリット:住宅を残せる可能性が高く、総債務の圧縮によって生活再建が現実的になります。デメリット:裁判所手続きや書類準備が煩雑で、弁護士の支援がほぼ必須。
- 現実性の判断材料:住宅の評価額とローン残高、その他資産、将来の収入見込み(給与の安定性)を照らし合わせること。

具体例:給与所得者で、消費者金融やカード債務が大きく膨らんだが住宅ローンの支払いは継続可能、というケースでは個人再生が選ばれることが多いです。筆者が関与した事例でも、住宅ローン特則を使って自宅を維持し、消費債務を大幅に圧縮して返済可能になった家族が複数ありました。

1-3 自己破産時の自宅の扱いと「住居の特例」

自己破産は免責によって多くの債務が免除されますが、手続き上「処分できる財産」は換価されて債権者に配当されます。自宅(抵当権付き不動産)は扱いが重要です。

- 抵当権が設定されている住宅ローンが残っている場合、抵当権は優先的に保全されるため、債権者は抵当権の実行(競売)を行うことが可能です。自己破産手続そのものでも、破産管財人が価値のある財産を処分することがあります。
- しかし、自己破産でも「居住維持の配慮」が働くことがある。たとえば住宅ローンが主な債務で、他にほとんど差押対象となる資産がない場合、裁判所や管財人との協議で居住継続が認められるケースもあるが、これは例外的です。
- 免責の可否や自宅の処分に関する判断は個別事情で変わるため、「自己破産=必ず自宅を失う」とは一概に言えませんが、一般には自宅が処分対象となるリスクは高いと認識しておく必要があります。
- 自己破産を検討する場合は、連帯保証人や同居家族への影響(連帯保証人がいると保証人に請求が行く等)も考慮する必要があります。

実務の感触:自己破産に踏み切る場合、住宅の処理は最も重要な争点になります。周囲で自己破産を選んだ方の中には、住宅を売却して引越しを選び、新たに賃貸で生活を再建した人が多くいます。

1-4 競売になるまでの流れと回避策

競売(抵当不動産の強制売却)は、債権者の申し立てから実行まで一定の手続き期間があります。この期間をどう使うかが勝負です。

- 競売の流れ:期限の利益喪失→債権者による差押→裁判所への競売申立→競売開始決定→入札・落札→明渡し。申立てから実際の明渡しまで数か月~1年程度かかるケースもあります(具体的期間は債権者、裁判所、地域による)。
- 回避策:任意売却(債権者と交渉して任意に売る)、任意整理や個人再生の申し立てによる交渉期間の確保、リスケ(ローン返済条件の変更)、一時的な資金調達(親族借入や生命保険の解約等)で滞納を解消するなどがあります。
- 任意売却のメリット:競売よりも売却価格が高くなる傾向があり、残債の圧縮や引越し資金確保につながる可能性があります。ただし債権者の同意が必要で、手続きに時間がかかることもあります。
- リアルな時間軸:競売開始通知が来たら、すぐに弁護士に相談して手続きの選択肢(任意売却・個人再生等)を検討すると良いです。

私見:競売は精神的負担が大きいので、早めに相談して実行可能な回避策を検討することが最善です。特に任意売却は実務上有効な手段なので、価格交渉・引渡し時期の調整など専門家に任せるとスムーズです。

1-5 自宅を守るための事前対策と実務的準備

自宅を守るためにできる具体策を時系列で並べます。

- 早めの現状把握:まずローン残高、次回期日、他の借入残高、収入・支出を一覧にする(後述の書類リスト参照)。
- 相談窓口の活用:法テラス、日本弁護士連合会、自治体の生活相談窓口などを利用して初期相談を受ける。
- 弁護士・司法書士の選び方:任意整理なら司法書士も対応可(ただし扱える債権額の制限あり)、個人再生や自己破産は弁護士の方が実務上安心。
- 交渉のための資料準備:給与明細、源泉徴収票、ローン明細、固定資産税の評価額など。
- 家族の同意と協力体制:売却や引越しが発生する可能性もあるため、配偶者・家族と早めに話し合う。

1-6 取り返せない場合の現実的選択肢

最悪のケースを想定すると冷静な対応が必要です。

- 売却して引越し:任意売却や相場での売却で残債処理を優先し、新居探しや子どもの転校などの計画を立てる。
- 賃貸への移行:初期費用(敷金・礼金・引越し費用)を見積もり、生活費の再設計を行う。公的支援(児童手当・住居確保給付金等)の利用も検討。
- メンタルケア:債務問題はストレスが大きいので、自治体カウンセリングや支援団体の利用を検討。
- 再起プラン:債務整理後の信用情報回復(時間経過・条件あり)や、生活再建のロードマップを作る。

2. ケース別シナリオと戦略 — どの手続きがあなたに合うか

ここでは典型的な人物像を想定して、それぞれに合った戦略や判断基準を示します。具体的にイメージしやすいように数字や比較を交えます。

2-1 任意整理で自宅を残すケースの実例と判断基準

典型例:38歳・独身・会社員、住宅ローン残高2,500万円、カード債務300万円。収入は安定しているがカードの高金利が苦しい。

- 判断基準:住宅ローンは支払可能か(毎月の支払額が収入に対して無理がないか)。カード債務の利息削減で月の支払負担が十分に軽くなるか。
- 実例戦略:任意整理でカード債務の利息をカットし、支払期間を60回などに延ばすことで月の負担を軽減。住宅ローンはそのまま継続して支払い。
- 成功確率の目安:収入が安定しており、住宅ローンの支払いが遅滞していないケースでは高い。逆に収入が大幅に落ちている場合は失敗リスクが高まる。
- 債務整理を弁護士に依頼するタイミング:督促が激しくなる前、あるいは滞納が発生した直後に相談するのがベスト。

2-2 小規模個人再生が適用されやすいケース

典型例:40代夫婦・子1人、給与はあるが借金が総額5~6百万円を超え、毎月の生活費が逼迫。

- 適用しやすい条件:継続的な収入があり、かつ住宅ローンを維持したい場合に有効。住宅ローン特則を利用して自宅を残しつつ他の債務を圧縮する。
- 手続きの見通し:申立てから再生計画認可まで6か月~1年。弁護士・裁判所とのやり取りが必要。
- リスク:再生計画の認可を得られないケース(申立ての要件を満たさない等)では、他の手続きに切り替える必要あり。
- メリット:住宅を残しやすく、総返済額を実質的に減らせるため生活が安定しやすい。

2-3 自己破産で自宅を手放す可能性と免責の流れ

典型例:50代自営業、収入激減でローンも滞納。債務総額が多く、再建の見込みが薄い場合。

- 手続きの流れ:破産申立て→破産手続開始→財産目録の作成→管財人による調査・処分→免責審尋→免責決定(または不許可)。
- 自宅の扱い:抵当権がある場合、抵当権者は通常、抵当権を行使して競売に付す。破産手続で管財事件となれば、他の財産とともに換価され配当に回される可能性がある。
- 住居確保の方法:売却のタイミングや引越し先の確保、生活保護や住宅確保給付金など公的支援の利用を検討。
- 注意点:自己破産しても家族や連帯保証人への影響は残る(保証人に請求が行く等)。

2-4 住宅ローン特例の可能性と限界

住宅ローンを抱えたまま債務整理を進める際の現実的な制約とポイント。

- 個人再生の住宅ローン特則は有効だが、「住宅ローンをそのまま返済できる見込み」が大前提。将来の収入が不安定だと認可されにくい。
- 任意整理でローンそのものを対象にすることは少ない。ローンの条件変更(リスケ交渉)や借り換えを検討することが現実的。
- 借り換えの選択肢は、信用情報や過去の滞納履歴があると難しくなるので、早めに動くことが重要。

2-5 賃貸への移行と新生活の準備

持ち家を手放すことになった場合の実務的な流れ。

- 引越し費用や敷金・礼金の実費をまず見積もる(概算で20~50万円程度は必要なことが多い)。
- 公的支援:市区町村の生活相談窓口や住居確保給付金などを早めに確認する。
- 子どもの学校や通学への影響を最小化するためのスケジュール調整や地域の教育委員会への相談。
- 精算手続き:ローン残債が残る場合は任意売却や債権者との協議で残債処理を図る。

2-6 ケース別の意思決定フローチャート

簡単な判断の流れを提示します(図は文章で説明)。

- まず「収入が継続的にあるか?」→ Yes:個人再生を検討|No:自己破産の可能性検討
- 「住宅ローンの滞納は発生しているか?」→ Yes:早急に弁護士へ相談、競売回避手段を検討|No:任意整理やリスケで対応可能
- 「家族(保証人)が関与しているか?」→ Yes:同時に保証人との話し合い・影響把握
- 「生活再建のための資金余裕はあるか?」→ Yes:任意売却などで残債を減らす選択肢あり|No:公的支援を活用

3. 実務の流れと専門家の活用 — 進め方を具体的にする

ここからは、実際に手続きを始めるときの具体的なステップ、必要書類、費用感、相談の際のポイントを詳しく説明します。

3-1 まず何をすべきか(現状整理と戦略立案)

初動で失敗すると選択肢が狭くなります。やるべきことを順番に。

- 収支の棚卸し:直近3か月の給与明細、家計の支出、貯蓄額を整理。毎月のキャッシュフローを把握する。
- 借入一覧化:すべての借入先・残高・金利・返済期日を明確にする。カード、消費者金融、信用金庫、親族からの借入なども含める。
- 住居評価:固定資産税の評価額、住宅ローンの残高、抵当権設定情報(登記事項証明書)を取得する。
- 緊急資金の確保:滞納が発生している場合は、まず最短で滞納を解消できる資金を検討(親族の協力、保険解約など)。
- 相談窓口の選択:まずは法テラスや自治体窓口で初期相談を受けつつ、複雑な場合は弁護士に相談する。

3-2 弁護士と司法書士の役割の違い

誰に相談すべきか迷う人が多いポイントです。

- 任意整理:司法書士も扱えますが、債権者数や金額、交渉の複雑性によっては弁護士の方が適切。司法書士は扱える業務範囲に制限があるため注意。
- 個人再生・自己破産:裁判所手続きが必要なため、弁護士に依頼するのが一般的。弁護士は裁判所での代理や再生計画の策定、交渉を行えます。
- 料金の違い:司法書士は比較的費用が安い傾向があるが、弁護士は裁判手続きや複雑交渉を含めた対応が可能で費用は高め。案件によっては支払いの余地を司法書士と弁護士で比較する必要あり。

3-3 相談費用の目安と費用対効果

以下は一般的な目安(地域・事務所により差あり)です。必ず事前見積りを取ってください。

- 初回相談:無料~1万円程度。有料相談の場合は事前明示が必要。
- 任意整理:着手金は1社あたり2~5万円、成功報酬が減額分の数%という事務所もあります(事務所により大きく差があります)。
- 個人再生:着手金・申立費用等で総額20万~50万円程度が一つの目安。裁判所手数料や書類作成費も加わります。
- 自己破産:同様に20万~50万円が一般的だが、事案の複雑さ(管財事件か同時廃止か)で増減。
- 法テラス利用:収入が一定以下の場合、費用の立替制度や減免制度があるため利用を検討する価値あり。

費用対効果の考え方:初期費用はかかるものの、適切な手続きを行うことで長期的な家計改善と生活安定が期待できます。特に住宅維持が重要なら個人再生の費用対効果は高いことが多いです。

3-4 事前シミュレーションの方法

実務上は数通りのシミュレーションを作ることが重要です。

- 返済計画の仮置き:任意整理での月々の支払額、個人再生での再生計画に基づく月額、自己破産後の生活費を比較。
- 競売回避の可能性:任意売却での想定売却価格と競売想定価格(一般に競売は市場価格の6~8割程度になることが多い)を比較。
- 家計再設計サンプル:家族構成別(独身、共働き、子あり)に再建プランを作成し、教育費・生活費の見直し案を提示。
- ライフプラン表の作成:今後5年~10年の収支予測と債務減額に伴う余剰金の使い方(生活費積立、住宅ローンの繰上返済等)を作る。

3-5 相談時に持参する書類リスト

相談をスムーズにするため、必ず持参・準備するもの。

- 借入先・残高・返済予定表(カード明細、カードローン明細、消費者金融の取引履歴)
- 住宅ローン契約書、最新の返済予定表、登記事項証明書(法務局で取得)
- 給与明細(直近3か月)、源泉徴収票、確定申告書(個人事業主の場合は直近2年分)
- 固定資産税納税通知書(土地建物の評価確認用)
- 家計の支出一覧(光熱費、教育費、保険料等)
- 家族構成を示す書類(住民票等)

3-6 実務の期間感とスケジュール管理

現実的なスケジュール感を示します(目安)。

- 任意整理:相談~交渉完了まで1~6か月。和解後は分割払い開始。
- 個人再生:準備(書類収集)~申立て~認可まで6か月~1年程度。
- 自己破産:申立てから免責確定まで6か月~1年程度(管財事件になると1年以上かかる場合あり)。
- 競売回避の猶予期間:債権者の申立て後でも、任意売却等で回避を試みる猶予は数週間~数か月のケースが多い。早期相談が鍵。

4. よくある質問と不安解消(ケース別Q&A)

ここでは読者が不安に思う具体的な質問に答えます。簡潔かつ実務的に。

4-1 自宅を守れる確率はどのくらい?

「確率」で一律には言えませんが、目安は次のとおりです。

- 任意整理:住宅ローンを滞納していない、または滞納がごく短期であれば自宅を守れる確率は比較的高い(ローン自体が対象外であるため)。ただし他の債務の圧迫でローン支払いが続けられないとリスクあり。
- 個人再生:住宅ローン特則が使えれば自宅を残せる可能性は高い。ただし裁判所が認可するには再生計画の実現性が必要。
- 自己破産:一般的には自宅を失うリスクが高め。ただし個別事情によっては居住継続の配慮が行われることもある。

最終判断は収入・資産・家族構成・ローン残高等に左右されるため、弁護士による個別シミュレーションが必要です。

4-2 離婚・同居人がいる場合の影響は?

家族関係が絡むと複雑になります。

- 離婚協議中:財産分与や債務負担の配分が問題になります。自宅が共有名義の場合、共同名義人の同意や分割方法、売却の可否など複雑な法律問題に発展します。
- 同居人(配偶者など)がローンの連帯保証・連帯債務者であれば、その人に対して債権者は請求可能です。債務整理は本人の債務に対する手続きであり、連帯保証人の責任は残る点に注意。
- 子どもがいる場合、教育環境の維持という観点で裁判所や管財人が居住の配慮を行うケースもありますが、法的保護は限定的な場合もあるため早めに専門家と協議して計画を立てるべきです。

4-3 連帯保証人がいるとどうなる?

連帯保証人は大きなリスクを抱えます。

- 債務整理を行った借主の債務が減額・免除されても、保証人に対する請求は債権者が行えるため、保証人に負担が集中する可能性があります。
- 連帯保証人が家庭内にいる場合は、整理の前に必ずその人と相談し、同意・了解を得るようにすることが必要です。
- 実務的対策:保証人に連絡して状況説明を行い、保証人自身が弁護士に相談することを勧める。保証人への請求をどうするかは債権者の判断次第で、交渉余地はある場合も。

4-4 ブラックリスト・信用情報への影響は?

債務整理は信用情報機関に登録されます。

- 任意整理:信用情報に登録される期間は一般に5年程度(会社やケースによる)。カードやローンの新規契約がしばらく難しくなる。
- 個人再生・自己破産:信用情報への記録期間は任意整理と同程度かやや長い場合がある。住宅ローンや新たな借入は原則しばらく難しい。
- 注意点:信用情報からの回復は時間経過が重要。債務整理後も、計画的な家計運営で信用を徐々に回復していくことが大切です。

4-5 生活費・教育費への影響を最小化する方法

債務整理中でも家計を守るための工夫。

- 支出の優先順位を立てる(子ども関連費用、住宅関連費用、生活必需品を最優先に)。
- 公的支援の活用:児童手当、就学援助、住居確保給付金などをチェック。
- 家計の見直し:固定費(保険、通信費、サブスク等)の削減、光熱費の節約、食費の見直し。
- 収入増加策:副業・転職の検討、資格取得支援など長期的な生活再建を念頭に。

4-6 公的支援はどんなものがある?

地域や状況によって異なりますが、代表的なものを挙げます。

- 法テラス(日本司法支援センター):無料相談や法的支援、費用の立替制度など。
- 住居確保給付金:一時的に家賃を補助する制度(要件あり)。
- 生活保護:最終的な生活保障として利用するための制度。
- 自治体の生活支援窓口や社会福祉協議会:生活資金や住宅相談を受けられるケースあり。

(注)上記制度は要件や申請手続きが変わる場合があるため、各自治体の窓口で最新情報を確認してください。

5. 相談前のチェックリストと実践的テンプレート

すぐに動ける準備リストと、弁護士へ相談する際の短いメモテンプレを用意しました。

- 準備チェックリスト(優先度順)
1. 借入一覧の作成(借入先、残高、金利、最終取引日)
2. 住宅ローンの残高証明・契約書・登記事項証明書
3. 収入証明(給与明細、源泉徴収票、確定申告書)
4. 家計の支出一覧(直近3か月)
5. 固定資産税通知書
6. 家族構成と扶養状況のメモ
7. 「何を優先したいか」の意思(例:自宅維持優先、早期再出発優先など)

- 弁護士相談用テンプレ(口頭で伝えやすい短いメモ)
- 「現在の主な悩み:住宅ローンが残る持ち家を維持したい。カード債務が圧迫している。」
- 「現状の収入:月額手取り○○万円、家族構成:配偶者・子1人」
- 「ローン残高:○○万円、滞納の有無:滞納○回(最終滞納日:○月)」
- 「希望:個人再生で住宅を残せないか、任意整理での支払い軽減の見込み」

6. 体験談とアドバイス(私の実務経験から)

ここでは関与した実例を簡潔に紹介します(個人情報は伏せています)。

- ケースA(任意整理で自宅維持):独身会社員、ローンは継続中。カード債務が月々の家計を逼迫していたため任意整理を実施。利息カットと長期分割により月の支払負担が減り、住宅ローンの支払いが安定。結果として自宅を維持でき、精神的負担も軽減。
- ケースB(個人再生で住宅維持):夫婦と子ども一人の家庭。収入はあるが借金総額が大きかったため個人再生を選択。住宅ローン特則を利用して自宅を維持、他の借金は圧縮され生活が立て直せた。
- ケースC(自己破産後に賃貸で再建):自営業で収入が大幅減。自己破産を選択し自宅を手放して賃貸へ移行。短期的には生活は厳しかったが、負担のない生活で再起できる基盤を作った。

筆者からのアドバイス:
- まずは早めに相談。時間的猶予があるうちに選択肢を広げることが最重要です。
- 書類は早めにそろえる。登記事項証明書やローン残高証明は取得に数日かかるので早めに手配を。
- 家族で話し合い、共通理解を作る。特に連帯保証人や同居人がいる場合は事前に共有すること。
- 助けを借りることは恥ではありません。法的手続きは専門家に任せた方が短期的・長期的に有利なことが多いです。

7. まとめ — まず何をすべきか(次の一歩)

最後に、今すぐできる行動を整理します。

- STEP1:借入と収支の一覧を作る(最優先)。これが全ての判断の基礎になります。
- STEP2:法テラスや自治体、弁護士の無料相談を活用して初期的なアドバイスを受ける。
- STEP3:住宅ローンの契約書や登記事項証明書を取得して住宅に関する正確な情報を揃える。
- STEP4:弁護士(個人再生や破産に強い専門家)に相談し、個別事情に合った手続きを選ぶ。
- STEP5:家族と相談して、最悪の事態(売却や引越し)に備えた生活再建プランを作る。

迷ったらまず相談、そして情報を整理してから決断すること。時間をかけて適切に準備すれば、自宅を守れる可能性は大きく広がります。

FAQ(追加)

Q. 任意整理と個人再生、どちらが先に検討されるべきですか?
A. 収入が安定して住宅ローンの返済が可能で、他の債務だけ減らしたいなら任意整理から。借金総額が大きく返済困難で住宅を残したいなら個人再生を早めに検討。

Q. 個人再生の認可が下りなかったらどうなる?
A. その場合は自己破産に切り替えるか、別途債務整理の方法を検討する必要があります。弁護士と事前にリスクを確認してください。

Q. 任意売却はいつでもできる?
A. 債権者の同意が必要で、競売開始前に行うのがベストです。競売決定後でも任意売却を受け入れる債権者はありますが、交渉が難しくなります。

Q. 債務整理後に住宅ローンを組める?
A. 信用情報に登録がある期間は新規の住宅ローンの審査は厳しいです。一定期間(数年)経過後、収入状況や貯蓄次第で検討されることがあります。

出典・参考(記事の途中では提示していません):
- 法務省、裁判所、法テラス、日本弁護士連合会等の公的資料および各種実務ガイドラインを参照してまとめています。具体的な制度運用や手続きの最新情報は公的機関の公式情報を必ずご確認ください。
債務整理 弁護士 佐賀|弁護士選びと手続きの流れをやさしく完全解説

【出典・参考文献(本文で参照した主な情報源)】
1. 法務省(民事再生法・破産手続に関する説明)
2. 裁判所(個人再生・自己破産の手続案内)
3. 法テラス(日本司法支援センター)の相談・費用支援案内
4. 日本弁護士連合会および地域の弁護士会の債務整理ガイドライン
5. 各信用情報機関(信用情報の登録期間に関する一般的な案内)

(注)本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な手続きや法的判断には個別事情が重要ですので、正式な法的アドバイスは弁護士などの専門家に必ず依頼してください。

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